2023.04.23
コラム
『スタッフ通信』Vol.17 ~映像②~

広報担当の野口(ぐっち)です。
前回のコラムに引き続き、映像制作について紹介したいと思います。今回は少しテクニカルな話もしているので、映像制作に興味のある方もぜひご覧ください。

第7弾公演『Frozen II』では、ストーリーを通して随所に登場する魔法の表現を視覚的にわかりやすくするために、舞台奥のホリゾントや前方のスクリーン(白紗幕)、そして舞台セットにプロジェクターで映像を投影しました。
今回は実際に投影した映像6種類(+静止画)の制作過程を一挙公開します。

①Young Elsaの魔法

冒頭の幼少期のシーンからいきなり映像の出番です。BroadwayのFrozen楽曲『A Little Bit of You』を歌いながら子役2人が登場する可愛らしいシーンから劇がスタート。このときElsaが魔法を使ってOlafを作るのですが、ここに魔法の軌跡をエフェクトとして投影しています。

舞台上の立ち位置に合わせて、中央から上手、上手から中央へ飛ばす2パターン作成しました。

Elsaの魔法にはこのように細かい光の粒子(パーティクル)の表現が使われることが多いのですが、これはAfter Effectsのプラグインである「Trapcode Particular」を使用して作成しています。
このプラグイン自体は映像業界でも使われる有名なものなのですが、PCのスペックが足りずにソフトの処理が激重になるのが難点でした。

Young Elsaの魔法発動シーン

②4つの精霊のエレメント

上のシーンに続いて、姉妹の両親であるAgnarrとIdunaが登場します。ここでAgnarrが子どもたちに「魔法の森」の話を聞かせる際に、4つの精霊について語られます。ここで映像ポイントです。

この映像は舞台奥上方の壁(ホリ)に投影しました。本番で実際に使った映像素材では、4つのエレメントはそれぞれ別々の映像として用意しました。これは演者の演技のタイミングに合わせて手動で1つずつ出現させていくためです。

本番のオペレーションは、上のように「OBS」というソフトを使って行っていました。演技のキューに合わせてPC上で手動で再生します。正しいタイミングで正しい映像を再生しなければいけないので、かなり緊張しました。

③Into the Unknown

序盤の見せ場です。ここの映像のクオリティ次第で劇全体の空気が一気に変わると思ったので、気の引き締まる作業でした。

1番サビの入りは、映画でElsaがバルコニーの扉を開け放つシーンをイメージして、中央から光が広がるような表現にしました。(権利の都合上音声はありません)

謎の声(Voice)に呼応するようにスクリーン中央をぼんやりと光らせます。

2番サビ前からラストまで。ご覧の通り、パーティクルが大量に登場します。このあたりの映像が一番レンダリングに時間がかかりました。ちなみにサビで登場する光の粒の森は、手描きです。

森はイラストで表現


映像全体の流れとしては、サビの盛り上がりを演出するために緩急をつけることを意識しています。なお、映画ではそれぞれのエレメントの精霊たちが星座のようなパーティクルで表現されていたので、それを再現したかったのですが、PCスペックと作業時間の制約を考慮して諦めました。

実際に曲が合わさるとなかなかの迫力でした

Into the UnknownのラストでElsaが魔法の森の精霊を覚醒させるシーンでは、それぞれの精霊のエレメントが大量に空中に浮かび上がります。

空中に浮かぶ大量のエレメント

この一枚絵のみであればPhotoshopでわりと簡単に作れてしまうのですが、映像として立体的な動きをつける必要があったため、この部分はBlender(3DCGソフト)を使って動きをつけました。

このように3D空間上に大量のエレメントを複製して配置し、カメラを移動させることで奥行きのある表現を作っています。

このあとに続く、エレメントが音を立てて地面に崩れ落ちていくシーンも同様にBlenderで作成しています。

④Pabbieのオーロラ

魔法の森の精霊たちが覚醒したあとのシーンで登場する、トロールの長Pabbieのオーロラ未来予知タイム。このシーンもセリフのみでは伝わりづらいとの判断から、映像をつけました。

ここの映像は、映画での表現が完成形だと感じたので、映画の完全再現を目指しました。結果的にはかなり再現度は高くなったのではないでしょうか。なお、この映像も②のAgnarr同様、Pabbieの演技に合わせてタイミングを調整する必要があったため、本番ではモチーフごとに別々の映像に切り分けて投影していました。

ちなみに細かい技術的な話をすると、このオーロラの揺らぎ感はAfter Effectsの「ディスプレイスメントマップ」というエフェクトを使って作成しています。下のように時間によって変化する白黒のフラクタルノイズを作成し、オーロラの絵にマップとして適用することで歪みを加えています。

オーロラはエフェクトモリモリで作成しているのでPCがモッサリしました

舞台映えして嬉しかったです

⑤火の精霊(Fire Spirit)の炎

Elsaたち一行が魔法の森に閉じ込められたあと、Arendelleの兵士たちとNorthuldraが登場します。その会話内でFire Spiritが森を炎で包んでしまうシーンです。このシーンは当初、赤い照明と木が燃えるようなSEにスモークを合わせて表現する想定でしたが、通し練習で確認するとイマイチ何をやっているかわからない(特にElsaが魔法で炎を消しているということが伝わりづらい)と感じたため、映像を追加することになりました。

まず、舞台中央に置かれた木の大道具(アルファ舞台工房様ご提供)の先端から発火し、精霊が地面に飛び降りて上手から下手に向かって移動します。

その後、木全体が燃え上がります。この2つ目の映像は、前日のゲネで木の形を確認してそれに合わせて急ごしらえしました。プロジェクションマッピング感が出たのでテンションが上りました。

木に投影されるように調整しました(ちょっと外れてますが…)

最後に、舞台全体にかかる炎の映像です。これらの映像は、演技のタイミングに合わせて投影できるように、またElsaの魔法で少しずつ炎をフェードアウトさせられるように、それぞれ別々に作成しています。3つの映像を重ねて投影することになるため、mov形式で背景を透過して作成しています。こちらも魔法の軌跡と同様にTrapcode Particularを使って作成しました。

この映像に加えて、Elsaが魔法で炎を消すタイミングに合わせて青い光を舞台全体に投影しました。ここはSEに合わせてタイミングよくPCのスペースキーを押す音ゲー感覚で楽しかったです。これがあるとないとでは「魔法を使っている感」が数段違うので、映像を追加して良かったと感じました。

魔法で懸命に炎を消すElsa

⑥Show Yourself

最後に、まるまる1曲分を映像で展開する、ストーリー終盤の見せ場です。

この曲の映像は、Blenderを使った3DCGを本格的に取り入れて制作したため、制作時間としては最も長く、2ヶ月ほど要しました。9月のFrozen Song Festivalからさらにブラッシュアップできたのではないかと思います。

Into the Unknownとは違ってほぼ全編映像ありで挑んだのでなかなか大変な作業でしたが、新たな制作手法にチャレンジできたので楽しかったです。(権利の都合上音声はありません。序盤の映像なし部分はカット)

上はElsaが氷の柱を次々起こしていくシーンのBlender上での作業工程です。3D空間上でカメラを動かして作成しています。こうして引きの絵で見るとなかなかシュールですね。笑

ちなみにこの氷柱のシーンでは、After Effectsで柱の根元に下のようなパーティクルを乗せています。細かいこだわりですがこれによって少し魔法っぽいニュアンスが足せたかなと思います。

4つのエレメントが生成されるシーンはお気に入りです

その他静止画

『Frozen II』では映像の他にもイラストなどの静止画をいくつか投影していましたので、ここでご紹介します。

ダムの遠景。冒頭のAgnarrの語りと、魔法の森に入ったあとのシーンで使用

終盤のEarth Giantに破壊される前後のダム

セットに投影。場面転換を効果的に見せられたと思います

Elsaたちが見つけた両親の難破船。あつおさん力作!
実際に投影すると大迫力でした

実は、今回の2日間公演のうち、2日目に新たに追加した投影画像が2つあります。1日目の公演終了後にあがった意見を参考に、急遽作成したものです。1つ目は、魔法の森の入口の霧。これは白紗幕のみで表現していましたが、分かりづらいという意見があったため、Show Yourselfの映像のラストからキャプチャして投影しました。

Show Yourselfのラストの霧をそのまま流用しました
「霧に閉ざされている感」が出ましたね

そして2つ目はラストシーンでダムが破壊されたあと、Elsaが魔法で氷の壁を作って洪水からArendelleを守るシーンです。ここもイマイチ分かりづらかったので、これまたShow Yourselfで登場するエレメントの紋章を投影しました。

視覚的に少しわかりやすくなったと思います

さて、『Frozen II』では本劇団初の試みとして映像演出を活用しましたが、制作過程では「舞台上で映える映像」をどう作ればよいのか、ということに頭を悩まされました。映像作品ではなく演劇である以上、映像ではなく演者が主役になるべきだからです。このあたりはまだまだ勉強が必要だな、と感じています。

個人的な制作スキルの観点でいうと、ほぼゼロ知識の状態からBlenderを少しだけ扱えるようになったことが大きかったです。なかなかまとまった時間が取れない中での制作でしたが、いろいろな表現手法にチャレンジでき、とても刺激的な経験になりました!

SHARE